「あれ。柚、遅刻?てか、どうした。」
教室に入るなり、自分の机に向かってなだれ込んだ。
「はぁー…。」
大きなため息をついている私に、心配そうに近づいてくる優希。
私は今朝の矢野先輩とのことを話した。
「えーーーーーー!矢野先輩と……」
大きな声をはりあげる優希の口を、必死で塞いだ。
優希はすごく驚いてるみたい。
「声、大きいって!」
塞いでいた手を離しながら言った。
「ごめんごめん、あまりの衝撃に。…で?なに言われたの?」
「ううん、何にも。」
え?と言って、目をまん丸くする優希。
きっと思ってもみなかった言葉がかえってきて、驚いてるんだろう。
そんな優希をみて、言葉を付け足す。
「なんか言おうとはしてたみたい。けど途中で桐瀬先輩がきて、矢野先輩のこと連れてった。」
「なにそれ、よかったじゃん!会長ナイスタイミング!」
優希は喜んでいるけど、実際私はそうでもなかった。
先輩の言いかけた言葉の先が気になって…、聞けなかったことが少し残念だった。
