「記憶」







「ああ…」




やっぱりな、俺は酷い。



正直に話して、

彼女が泣くとわかっているのに

言ったんだ。




案の定、彼女は泣いた。


声を押し殺して、

丁寧にされた化粧が崩れ

睫毛に涙の雫が乗っている。



以前、優香が俺に

結婚をチラつかせた事があった。


確かに、優香は24歳だから

結婚にも憧れがあるよな。




だけど、俺は………

ミラナしか愛したくないんだ。


ミラナと出会えないのなら、

一生結婚する気もなかった。




優香が俺の家に置いていた荷物を

纏めた物を渡す。




それを見て、優香は更に涙を流し

俺がティッシュを差し出すと

受け取って鞄から

取り出したハンカチに顔を埋めた。