慣れない廊下を慣れない足取りで歩く
今の私は緊張の塊で、直ぐに弾けて爆発しそう。

「アンタも六組?」

不意に聞き慣れない声が飛んでくる。
渋めのハスキーボイス。
其れが私に対してだと気付くと、其方へと振り返って笑顔を見せた。

其処に居たのは茶色のショートヘアの女の子。
釣り上がった目尻と、アーモンド型の瞳が特徴的な。
男勝りで気が強そうな女の子だけど――何となく、良い人な気がする。

「そうだよ。貴女も?」
「うん。
あたし雛形 徳(ひながた めぐむ)
アンタは?」

「私は新谷 悠里。宜しくね」
「悠里、か。宜しく」

あれ? あれれれ? あれれれれ?

之は、
行き成り友達がひとり出来たって事?

や、やったー!

嬉しくて、今直ぐ駆け回りたい衝動に駆られて、代わりに雛形さんの手を握るとブンブンと振り回して、宜しくの握手を交わした。
雛形さんは半分呆れた様に笑ってたけど、「徳って呼んで」と低い声で笑った。


徳が友達となった今!!
私に怖いものなどない!!!

緊張の塊だった数分前が嘘だったかの様に――今の私は、最高潮までに緊張が解れていた。
これも徳のお陰。
お陰様で、これからクラスで行われるホームルームも乗り越えられそうな予感。
入学式は、確か、その……後だっけ?