出来る限り最短距離。
且つ人混みの僅かな所をくぐり抜けて、私は漸くクラス名簿の書かれた紙の前に辿り着く事が出来た。
まさかこれ程にまで過酷な事を入学式当日に行わなければならないとは思いもしなかったから、無意識に息が荒れる。

第一関門をくぐり抜けた私を次に待ち構えていたのは、黒で書かれた文字の中から私の名前を探し出す作業。
背後から他の新入生も同じ様に自分自身の名前を探し出す気配が漂っているが、今は其方に気を向ける余裕など私には、
ない。

最大限にまで目を開き、『新谷 悠里』――私の名を探す。

最初の文字が『あ』である事は本当に救いだと思う。
『な』や『は』等中間の文字が最も初めに来るとなると大体の目星がつかない為不便だろうとこの様な作業をする時よく思う。

――あった!
――一年六組二番・新谷 悠里。

腰辺りで小さくガッツポーズを決めた後、再び人混みを掻き分けて人の密集する場所から遠く離れた。
漸くひと段落ついて、思わず安堵の息が漏れる。

――疲れた。
――私、初日からこんな風になってて大丈夫かな?

僅かな不安が頭を過ぎるが、
其れを振り切るように頭を振るった。

「駄目駄目! 弱気になってちゃ!!」

私はこの高校で
『青春』の味を味わうんだ!!!!!

部活に打ち込んで、
友達をいっぱい作って、
行事を精一杯楽しんで、

そして、あわよくば――

『恋』をしたい。

熱く燃え上がる事が出来て、
――時にビターな思いを味わう。

素敵な恋