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 ――この、居たたまれない空気はなんだろう。


 私は大きくため息を吐き出す。

 目眩さえ覚えた。 

 狭い、ほこりだらけの事務所の中に『変態』が二人。

 それだけでもう、私は呼吸がしづらくて堪らない。



 ――せわしなく『反復横跳び』を繰り返しながら機関銃のように言葉を乱射する変態A。


 ――並ぶ本棚の掃除をしながら、呆然と、ただ無言でそれを見つめる変態B。





A「おおうォォう! あなたが灰川倫介さん本人ですかァ!」


A「いやぁ想像してたよりも随分と若いんですね!」


A「俺があなたに興味を持ったのはかれこれ二年前! 当時はまだ無名だったあなたのことを、その時から俺は知っていたァ!」





B「………………」





A「多くの事件をたった一人で、次々と解決していく中でその方法やスタイルを誰も知らないでいるのはなぜだ?」


A「いや、俺には察しがつくね!! 知らないんじゃない! 理解できないんだ!!」


A「でも俺は違う、俺には! そう! 俺にはァ!」






B「――それで……?」





A「聞きたいことはたくさんあります! そりゃもう山ほどォ!」


A「俺もいつかこの業界に入れたらなーなんて考えちゃってて。あ、いや、もちろんまだまだジュクジュクの未熟者なんすけど!」


A「情熱だけは誰にも負けませんって言いますかァ。――そもそも! 俺には」







B「――君、かなり煩いな」