『淡白ワカメ』と『爬虫類メガネ』は何一つ噛み合うことなく互いに言葉を交わしていく。
全くもって人間的な相性が皆無なのは明白すぎて逆に辛い。
だが、こんな二人にも、ただ一つだけ、共通点がある。
『心霊オタク』なことだけは揺るがない事実だ。
「――ふう。いやぁ、熱意は伝えきりましたんで、本題の『依頼内容』についてなんですが」
「一応聞こう。……どのみちもう君のブラックリスト入りは逃れられないですが」
肩で息をする白条は、ずれた眼鏡を直すとゆっくりと語り出した。
「灰川さん、『ダルマサマ』って聞いたことありませんか?」
「……『ダルマサマ』? ……いや、待て。どこかで見かけた名だ」
「2ちゃんねるでしょ!」
「……いや、違う。どこかの地方の伝承だった気がするのですが」
「……。今、ネットで話題になってる『呪い』の方法でして。俺の見解じゃあ、絶対に連日の猟奇殺人に『ダルマサマ』が絡んでる。間違いないね」
私は白条のその言葉に、目を見開く。
「ちょっと、白条君、どういうこと?」
「どうもこうも。『ダルマサマ』の呪いを受けた者は手足を引きちぎられて『だるま』にされて殺される。そして、それは『箪笥』の中で行われるんですよ」
「……たんす……それって、つまり」
「……白条慎也君、だったね。続けてください、非常に興味が湧いてきました」