「佐倉さん!お元気で」

最後の声をかけると、佐倉さんは笑顔で手を振ってくれた。

その姿が見えなくなった時、どこか寂しさを感じるから不思議だ。

「寂しいね、凌祐」

ふと呟くと、圭祐が耳打ちをしてきた。

「そんな事はないと思うけどな。俺は邪魔だろうから、先に戻るな」

「えっ?圭祐!?せっかく久しぶりなんだから、一緒に帰ろうよ」

そう呼び止めた私の手を、凌祐が引っ張った。

「せっかく気をきかせてくれたんだから、二人きりになれる場所に行こう」

ニヤッと笑った凌祐は、半ば強引に車へと連れて行ったのだった。

「二人きりだなんて、毎日そうじゃない」

圭祐とも話がしたかった私は、わざと口を尖らせた。

すると、ハンドルを握った凌祐が、拗ねた様に言ったのだった。

「言ったろ?相手が例え圭祐でも嫌だって」

その姿に思わず吹き出す。

「凌祐ってば時々、本当に子供ぽいよね」

「美亜が初めてなんだよ。俺に対してさっぱりしてる女は。だから、こっちが情けない行動を取ってしまう」

顔を少し赤くして、凌祐は軽快に車を走らせた。

そして、海岸沿いの側道で停車したのだった。