床に倒れ込んだ敦貴は、そのままうなだれた。

「水川さん、美亜は俺がちゃんと幸せにするから、もう心配しなくていいよ」

凌祐に手を握られ、その場を立ち去ったのだった。

だけど、少しだけ敦貴が気になってしまい、ほんの一瞬振り向いたけれど、倒れ込んだまま動かない姿が見えるだけ。

それが、情けなくも痛々しくもあった。

「ごめんな美亜。俺がした事も、あいつと変わらない」

帰る途中、凌祐はそう言った。

だけど、そんな事は気になる問題ではなかった。

「いいの。だけど、私ってば、そんなに単純だったのね。結局は、二人の思う様に動いていたんだから」

そこは悔しい。

すると、凌祐は笑ったのだった。

「それだけあいつも、美亜を見てたんだよ。そこは妬けるな」

「何言ってるのよ。それより、凌祐の演技はさすがね。すっかり騙されちゃった」

すると、得意げな顔をされてしまった。

「だろ?だけど、本当は心苦しかったんだよ。美亜を騙してたんだから」

「本当なの~?子供はいらないとか言ってみたり、本気な部分もあると思うけど」

そんな嫌みを言うと、凌祐はムッとした顔で私の手を引っ張り、細い路地へと入った。