「やっぱり、間違ってなかっただろ?じゃあ、いくらでも協力するけど、俺は夜でなければゆっくり時間が取れないんだ。社長は?何時に帰ってくる?」

「それが…。遅くなるみたいで」

さっそく、敦貴の予想通りの展開が起こっているだけに、話し辛いったらない。

「遅くなる?それは仕事でか?」

「う、うん…。しばらく、遅くなるみたいだから」

敦貴はこの言葉を、どう思っただろう。

きっと“そら、見ろ”と、笑われるに違いない。

だけど、敦貴は神妙な口調で言ったのだった。

「そうか…。まさか、本当にそんな事になるなんてな。それなら、今夜会わないか?俺の行きつけの店で会おう。必ず、それだけだと約束するから」

「うん。分かった。ありがとう…」

てっきり、笑われると思ったのに、意外なくらい敦貴は心配そうな感じだ。

「じゃあ、後でまた連絡する。美亜の力に絶対になるから」

そう言われて電話は切れた。

「何だか拍子抜け」

一番分からないのは、敦貴の本心かもしれない。

嫌がらせの様に見せたり、こうやって本気で心配してくれたり。

よく知っているはずの敦貴が、一番分からなくなっていた。