会社の利益とは、さすが凌祐だ。

「凄いのね。そんな大事な事を話してくれるなんて嬉しい。今まで、仕事の話をしてくれなかったでしょ?けっこう寂しかったんだよ」

そう言うと、凌祐は小さく微笑んだ。

「余計な心配をかけさせたくなかったんだよ。そうだ。美亜、結婚式の時にタクシーの運転手さんから貰ったお守り、まだ持ってるか?」

「お守り?あの、子宝の?」

“子宝”と口に出し、どこか抵抗感を感じる。

「そうだよ。あれ、あるなら持ってきてくれないか?」

「う、うん。待ってて」

小走りでバッグを取りに行く。

確かバッグの中に、おさめたままになっていたはずだ。

「あった!」

内ポケットの中に、懐かしいお守りが出てきたのだった。

「はい、凌祐。これをどうするの?」

お守りを手渡すと、凌祐はそれをカバンにしまった。

「これ、実はかなり有名なお守りらしいんだよ。ご利益もあるらしくて。唯香に聞いてビックリでさ」

「佐倉さんに…?」

何で、佐倉さんとそんな話になったのだろう。

心臓の鼓動が速くなってくる。

「そうなんだ。だから、俺が持ってていいか?この間言ったろ?まだ子供は欲しくないんだよな」

凌祐は鼻歌を歌いながら、出勤の準備を始めた。

そんな凌祐の側で、私はただ呆然としてしまうしかなかった。