「抱いた…証拠?」

胸が高鳴る私とは反対に、凌祐はいたって普通だ。

むしろ、すっかり目を閉じていて、今にも眠りそうな勢いだった。

「そうだよ、抱いた証拠。だから、美亜から俺の匂いがする。それが最高だろ?だから、美亜は何もつけなくていいんだよ」

「何もつけなくていい?本当に?」

と、しつこく会話を続けると、吹き出す様に笑われてしまった。

「ったく、美亜は眠たくないんだろ?お喋りばっかりして」

目を閉じたまま、凌祐は髪を撫で続けている。

「分かった?何だか、目が冴えちゃったの」

「俺はもう眠いよ。今夜は、かなり頑張った方だから疲れ果てたな」

「何言ってんのよ」

恥ずかしさで顔が熱くなるけれど、それを凌祐が気付くはずはない。

目は閉じたままなのだから。

「ねえ、凌祐。ちょっとだけでいいから、目を開けてよ」

ねだる様に、わざと猫撫で声を出してみたけれど、凌祐は目を開けない。

「困ったお姫様だな。俺は美亜の温もりで、もう限界だよ。明日の朝なら相手するから、もう寝ろよ。おやすみ」

「ちょっと、凌祐!?」

と、呼んでみたけれど、髪を撫でる手も止まり、凌祐は穏やかな寝息を立てて、眠ってしまったのだった。