その返事を聞く前に、車はマンションへと着いた。

そして部屋へ上がりながら、凌祐が教えてくれたのだった。

「水川社長というのは、会社を興してたった2年で、業界トップクラスになったんだ。人脈も広いし、アクティブな性格だし。それで、いつの間にか夫人たちを味方につけて、中心的存在になったというわけさ」

「へえ。そもそも、今日の集まりって、独身の人でもOKなんだ?」

すると、凌祐は軽快に笑ったのだった。

「ただの口実だから。夫人の集まりってのは」

もしかすると敦貴にとっては、夫人の集まりの方が好都合なのかもしれない。

中心的存在になれたのだから。

だけど、そうなる事に何の意味があるのだろう。

人脈を広げる為か?

それとも、情報収集の為か。

どちらにせよ、敦貴は仕事の為だけにやっている気がする。

やっぱり、変わってしまったのだ。

元々、仕事人間ではあったけれど、あんな冷たい雰囲気のある人ではなかったのに。

どことなく私の事も、損得感情で見ている様に感じる。

「何を考えてるんだよ?さっきから、水川社長の話ばかりして。カッコイイ人だったもんな。気になるか?」

考え込む私に、凌祐は覗き込む様に聞いてきたのだった。