私たちの横にやって来たその人は、懐かしい人。

敦貴その人だった。

「み、水川社長!?」

三人は、敦貴の登場に激しく動揺し、逃げる様に去って行った。

どうして、ここに敦貴がいるのだ?

その衝撃に、ついさっきまでの嫌がらせなど、どこかへ吹き飛んでしまった。

「美亜、久しぶりだな。いきなりの洗礼で驚いたろ?あまり気にしなくていいから。みんな、美亜を妬んでるだけなんだ」

二年ぶりの再会だというのに、敦貴はまるでいつも会っているかの様に、気さくに話しをしてきた。

「敦貴、何でここに?社長って、どういう事?」

パニックの私は、敦貴を見上げる体が小さく震えている。

見た目は、二年前と変わらない敦貴。

今も掛けている黒ぶちメガネが、知的さとそして自信を大きく醸し出していた。

「驚いた?俺は、美亜の結婚の方が驚いたけどな」

口角を上げて、不敵に笑う敦貴のその言い方は、昔と少しも変わらない。

「私の質問に答えてよ…」

「答えたいけど、あまり聞かれるのもマズイだろ?少しだけ部屋を出よう。美亜、廊下の奥にある非常口で待っていて」