振り向くと、30代半ばくらいの女性が三人、薄ら笑いを浮かべて立っている。

細い目元は釣り上がっていて、一目で敵対心を持たれていると感じたのだった。

全員、ベージュのスーツに髪は巻いていて、派手な雰囲気だ。

「そうです。よろしくお願いします…」

生理的に受け付けない感じを持ちながらも、頭を下げて挨拶をすると、その人たちはわざとらしく聞いてきたのだった。

「あら?奥様は、LOVE RINGをお持ちじゃないの?」

「ラブリング?」

こんな場所で、その懐かしい言葉が出てきて、思わず聞き返してしまった。

「ええ。そうよ。今、ここで流行っているの。お付き合いしていた頃に、頂いた指輪をしてくるっていうね…」

そう言いながら、真ん中の女性が半歩前へ出て、左手をちらつかせた。

そこの薬指には、確かにデザイン性のある指輪が光っている。

すると、隣の女性がその人に言ったのだった。

「あら?この方に、それを言っちゃダメよ。浅井社長とは、政略結婚なんでしょ?お付き合いの時期なんてないんだから」

「あ、そうね。これは失礼な事を申しました」

クスクスと笑うその人たちに、心の中では腹立たしさでいっぱいだ。

悔しい…。

とその時、

「そのお言葉、浅井社長の前でおっしゃっては?」

男性の声がして、私の心臓は跳ね上がったのだった。