いつか佐倉さんから聞いた、凌祐の大好きなコーヒー豆を買い込み、朝からそれを煎れている。

凌祐が顔を洗って戻ってくる頃に、煎れたてコーヒーが出来上がるようにするのも、楽しくなってきた。

「今朝もいい匂いがするな」

すっかり目が覚めたらしい凌祐は、ルームウエアのまま笑顔で側へきた。

「でしょ?はい、コーヒーも出来上がり」

そう言ってカップを手に取ろうとしたところで、凌祐に抱きしめられた。

「ちょ、ちょっと…」

「いいじゃん、少しくらい。ゆうべは全然、美亜に会えず仕舞いだったんだし」

「それは、凌祐が接待だったんだから仕方ないでしょ?それより、コーヒー冷めちゃうよ」

朝から甘い時間を作るのは、どうもまだ慣れない。

恥ずかしさもあって、気をそらそうとしたのに、凌祐は意に介した様子はない。

それどころか、顔を近付けてきて言ったのだった。

「それより、キスしようぜ美亜。これからは、朝はキスして起こして欲しいな」

「な、何言ってるの!?」

と言ったところで、唇が塞がれた。