ようやく、本当に結婚をしたのだと実感する。

紙の上ではとっくに夫婦だったけれど、心は繋がっていなかった。

それが、やっと繋がったのだ。

「それじゃあ、誓いのキスを…」

顔を近付ける凌祐の体を、思わず押し返す。

「ダメよ。神様の目の前で…」

油断をすると、すぐこれだ。

すると、凌祐は笑って言ったのだった。

「何を言ってるんだよ。一体、何組のカップルが、ここで誓いのキスをしたと思ってるんだ?」

「あ…、そうか」

言われてみればそうだ。

ここでキスをする事は、不謹慎な事ではない。

「だから美亜、今度こそ本物の誓いのキスをしよう」

「う、うん…。改めて言われると恥ずかしいけど」

「俺は恥ずかしくないよ。むしろ、早くキスしたくてウズウズする」

そして、凌祐はゆっくりと唇を重ねた。

まったく、時々見せる子供ぽい一面に、私は振り回されるばかりだ。

だけど、それでもいい。

ようやく神様に誓えるのだから。

今度こそ、本当の愛を。

強く抱きしめてくれる凌祐の体からは、温もりが伝わってくる。

その温もりを、絶対に離さないと心に決めたのだった。