「そこまで好きなら、一度くらい告白すれば良かったのに…。凌祐なら、もしかすると、考えてくれたかもしれないじゃない?」

そう言うと、凌祐は穏やかに微笑んだ。

「怖かったんだ。彼女を失うのが。告白をして、もしフラれたらどうする?気まずくて、顔も合わせられなくなるかもしれないだろ?」

「うん…。まあ、確かに」

「自分の気持ちさえ隠していれば、少なくとも彼女とは知り合いのままでいられる。一生、自分のものにはならないけれど、失う事もないと思ったら、告白をしない方を選んだんだ」

凌祐にとって、その人はとてつもなく大きな存在だと分かった。

失いたくないから告白をしないだなんて、ある意味究極の愛の証明に思えるからだ。

ずっと彼女を好きでいる為に、凌祐は告白をしない選択をしたってわけか。

「だからって、唯香を使ったのは最低だと思うけど…。だけど、どこかではけ口が欲しかったんだ。彼女を手に入れられないもどかしさを、唯香の気持ちに甘えて発散させていた」

「そういえば、佐倉さんは最初から知っていたと言ってたけど…。じゃあ、本当に最初から体だけの関係だったの?」

「そうだよ。最低だろ?だけど、それだけどうしようもなかった。彼女を好きだと思う気持ちが、苦しくて苦しくて…。どこかにぶつけたかった」