結局、その夜遅くマンションへ戻った私たちは、寝室を別にした。

元々のベッドルームは、凌祐から使う様に言われ、凌祐が別の部屋を使ったのだった。

“距離を置く”

その希望通り、凌祐は次の日の朝は早く出勤した様で、私が起きた時には姿が消えていた。

どうやら、朝ご飯を食べずに行ったらしい。

そう思ったら、凌祐の体が心配になるから嫌になる。


………
……

「そう思うなら、余計な事を言わなければいいだろ?」

出勤をして、真っ先に圭祐に話をすると、簡単にあしらわれたのだった。

「だって…」

「そんなに心配しなくても、兄貴ならちゃんと何か食べてるよ。子供じゃないんだからさ。それより、ちゃんと仕事に就け」

「はぁい」

ため息を一つ。

副社長室を出て、給湯室へと向かった。

朝の日課の一つ、給湯室の清掃だ。

すると、そこへ凌祐と佐倉さんがいたのだった。

「あら、美亜さん。おはようございます」

いつもの爽やかな笑顔で、佐倉さんは挨拶をしてくれた。

だけど凌祐は、私を見向きもせず、持っていたカップをその場へ置いたのだった。