「中、入れよ。」



龍斗は何もなかったかのように部屋の中へと誘導した。そしてベッドに座った。
紗姫は距離を置きながらソファーに座った。


紗姫は何から話していいのかわからず、ずっと黙っていた。





そんな彼女に気付いたのか、龍斗は紗姫の座るソファーへと移動した。





「お前が俺を選ぶなら、今ここでキスしろ」

「え…」



龍斗はそう言うと、雑誌を読み始めた。






優柔不断なあたしには決めることが出来なかった。


ひたすら雑誌を読みつづける龍斗、
下を向くあたし。







そして時間ばかりが刻々と過ぎていった。







何分くらい経っただろうか…
龍斗はもう二冊目の雑誌を開いてた。






「あたし、玲汰のことがすきなの…」

紗姫は勇気を振り絞って言った。


「気付いてた。」

こっちをじっと見つめてきた。
あの優しい瞳で。


でもその瞳は、どこか悲しそうだった。