─────ピピピピピピピピッ
ガチャンッ
『…んーーー…っ』
頬に風があたる
昨日開けっ放しで寝てしまった窓から入ってきた春の匂いで、部屋の中はいっぱいだった
『ふふっいい季節だねぇ』
暖かい空気に顔がほころぶ
もうちょっと…
もうちょっとだけならいいよね
ふとんを頭までかぶってっと…
…ん?
ふとんを上にひっぱろうとする手を誰かが邪魔する
…しつこいなぁ
そのまましばらくぐいぐいとひっぱりあいっこしてると
『ああもう!はるっはるか!!いい加減起きろって!!』
…ん?
ふとんからそーっと顔を出すとどアップにいたのは…
『ゆっゆう?!?!』
『おまえさ、今日何の日?おぼえてる?昨日ずっっとウキウキしてたの誰だよ』
『今日って……あ、あ!入学式ーーーー!!!』
『うるせーなぁー耳元でー。あと20分後には家でないと遅刻だぞ。お前が遅れたら俺まで遅刻にな
『なーんでもっと早くにおこしてくんなかったのーー!』
『はー?おま、俺ちゃんとおこしただろ?!?!』
…ははは…ごもっとも。
まあまあとぷんすかしてるゆうを部屋から追い出す
今日は入学式。
私、木口春花は高校一年になる
そしてさっきおこしてくれてた坂田優輝も同じ高校に通う
優輝…ゆうは、私の家の隣に住む保育園からのいわゆる幼なじみで親同士も仲がいい。
『セーラー服のリボンてこんなもんでいいのかな…?』
中学まではブレザーだったからセーラー服はまだ着慣れないし、変な感じがする
生まれつき茶色のねこっけの髪は整えるのが大変だから高くひとつにまとめた
『…よっし!おわり!』
階段をバタバタとおりる
『あ、きた』
『あらはるかちゃんと起きたのね!優輝君のおかげねぇ』
『でしょー。あ、美奈子おばさん紅茶ごちそうさま!』
『……あなたら親子か。』
まあ、お母さんとゆうのやりとりおもしろいからいんだけどね。
『優輝君は息子よぉー。それよりはるかセーラー服にあうじゃない!遅刻しないようにいきな!』
『ほんとっ?!やったー!もういく!ゆうごめんいこ!』
『ほーい。美奈子おばさんいってきまーす!』
『お母さんいってきます!』
『きをつけてねー!』
ガチャッ
────サアッ
『わぁーー!!!』
家の前の桜並木が満開だった
『すごいな、これ』
ゆうも隣でびっくりした目をしていた
『よし!はしろ!』
『えぇー…あ!おいまてよ!はる!』
暖かい風が、髪を、制服を、すり抜ける。
私達は高校までの坂道を全力ではしった。
坂の上に高校が見える。
そう、私達が精一杯かけぬけた沢山の日々がつまっている、この場所が。
