「毎度の事だけど、わざわざ扉を見つけるのも面倒臭いんだよねぇ。
この人混みの中だとさ」
澄麗が苦笑いしながらそう言う
そうだよなぁ、と夕哉も笑っている
実質、扉は古臭いからか廊下の壁と同化しているように見えるのだ
扉の色は統一されているものの、ドアノブに目印の紙がないとうっかり見逃してしまう
そのせいで、始業式の時に扉が見つけられず遅刻する人も中等部の頃からよくいたものである
「にしても、今回の階段長くねえ?」
荘真が振り返って、気だるそうに言う
確かに普段なら二階に当たる部分で教室に繋がる廊下への扉があるのだが、今回はもう既に三階に当たるところまで登っている
校舎地図を見る限り、ここは四階建ての校舎だ。
一階が1年生の教室、二階が2年生の教室で三階が特別教室
となるとSクラスの教室があるのは四階だと伺える
もちろん、普通の生徒がSクラスの教室に入れるわけがない
しかし、これだけ普通の生徒と離していると言うことは、だ
「高等部だと本格的に始まるのね。
"仕事"が」
葉月は私の思考回路を読んだかのようにそう言うと、微笑んだ