ざぁ、と風が桜並木と私の髪を揺らす 夕哉は目を何度かパチクリさせる しかし何が面白いのかフッと笑って見せると 「あるよ」 と、私の頭に手を乗せる そしてそのまま何度も頭を撫でた まるで、愛しい物を触るような手付きで。 「桜を心配する理由なんて山ほどある、けど」 夕哉は頭を撫でる手を止め、私の顔に両手を添えて上を向かせる 思いのほか顔が随分近くにあって動揺する