「何を拗ねてるかは知らんけど、ごめんって」

「別に拗ねてないし」

「嘘つき」


ケラケラと横から笑い声が聞こえてくる

嘘つきはそっちだろう。天然タラシめ


ちらり、と横に視線を寄越せば幼馴染みはぼんやりと桜並木の奥を見ている

すると私の視線に気付いたのか、こちらを見る


「はは、めっちゃハムスターみたい」

「ちょっ、摘まないでよ」


夕哉は指先で私の頬をつまんできた

むにむに うりうり、と執拗に頬をいじられる

私はその手を払い除けて夕哉のネクタイへと手を伸ばす


「え、何。頭突きですか」

「されたいの?」

「違います」