俺、結城椋は慶応義塾大学経済学部卒業。
その後日本有数のお菓子メーカーであるエンゼル製菓に入社。
しかし経営方針が合わず
僅か1ヶ月で辞めることを決意。
だが辞めるにしてもなにかキャリアは残しておくべきだ
と入社一年目にも関わらず
多くのヒット商品を生み出した。

そんな折り
ライバル会社である文治の常務の娘と出会い
その伝手で文治へ移ることになった。
コネがあったとしても実力がなければはなしにならない。
俺は、面接の時に一番下のいわゆる落ちこぼれの部署に自ら志願した。
晴れてその希望が叶い
今日からこの菓子事業企画マーケティング部に所属することになった。
…名前こそもっともらしいが
その実、なんかふわふわとしたよく実体が掴みにくい部らしい。
さすが落ちこぼれ!
ここを立て直して
一気に出世の足掛かりにさせてもらおう。

俺は地図を見ながら目指す。
会社の端、かなり奥まった所だ。
端々に見える蜘蛛の巣、埃、食べ物のゴミ。
ちゃんと掃除しろ、という言葉すら出すのも億劫になりそうだ。
しばらく歩くと一枚の扉をみつけた。
そこには『菓子事業企画マーケティン部』と書かれており
ちいさく“ン”と“部”の間に吹き出しで“グ”とかかれている。
しかも一回“コ”って書いて黒く塗りつぶされている跡がある。
おいおい、今時小学生でもしねーぞそんなこと。


期待と不安を胸に俺はドアを開いた。