コーヒーの香ばしい匂い。
部屋の中をいっぱい、充満している。
結局あそこでは何もできなかった。
手に握られたトンカチも何も壊さないまま用具入れに戻された。
PC近くのシュレッダー。
今回こそはこの企画書を処分しよう。
スイッチをいれると一定のリズムでなるモーター音。
紙をいれると不思議と心地の良い不協和音が流れた。
今の俺には最高にお似合いだ。
自嘲気味にほほ笑んだ。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
出ると中上梓(なかがみあずさ)がいた。
彼女は今俺が付き合っている女性だ。
もちろん父親は文治の常務取締役。
俺のキャリアアップの立役者だ。
これからもその為に役立ってもらうつもりだった。
しかし、本当の俺は・・・
コネをつかってでしか上に上り詰めることはできない凡庸な人間だ。
ピンポーン
もう一度インターホンがなる。
「どうしたの。」
「椋くんがお菓子部に入ったってお父さんから聞いて。」
「あぁ・・・。入って。」
ロックを解除する。
しばらくして、彼女が部屋に入ってきた。
「お邪魔しまーす。わぁ~椋くんの部屋久々~。」
「最近仕事が忙しかったから・・・。ごめんね?」
「もう、あんまりほっておくと・・・浮気しちゃうよ?」
彼女はすぐ冗談、と微笑んだ。
「私は椋くん一筋だもん。」
「俺も梓だけだ。」
俺はそんなことこれっぽっちも思っていないが、彼女はそういうとすごく喜ぶ。
そっと顔を近づけ短いキスをする。
「はい、コーヒー。」
「ん~おいし~。椋くんのコーヒー大好き。」
「梓がいつ来てもいいように、梓の好きな味にしてるんだ。」
一息つくと、彼女はさっきの話を始めた。
「椋くん、お菓子部に今いるって本当?」
彼女の目が嘘だと言ってくれ、と訴えている。
しかし、彼女には残念だがこれは事実だ。
「うん。」
「どうして!」
普段声を荒げない彼女が悔しそうに叫んだ。
彼女はヒステリックなめんどくさい性格じゃない。
そんなに俺があそこにいったのが気に食わなかったのか。
「椋くんはあんなとこにいちゃだめだよ。才能がつぶされちゃう。」
「俺には・・・才能なんてない。」
「ある!椋くんは人一倍努力してるもん。努力することも才能の一つなんだよ?・・・でも、努力は必ずしもむくわれない。あんな所にいたらでる芽もでないよ。」
本当に彼女は俺の将来を心配しているのだろう。
確かに、自分の彼氏があんな環境にいたら誰だって嫌だ。
「私、お父さんに部署変えてもらうように言おうか?」
「大丈夫だよ。」
今までの俺ならつかえる物はすべて使っただろう。
だけど、
「お義父さんにもいったけど、俺があそこに入ったのはお義父さんに梓との結婚を認めてもらうためなんだ。入る時はお義父さんの力を借りたけど、その後は自分の力だけでトップまでのぼりつめたいんだ。その為にはまず、あの部署から始めるのが最適だとおもったんだ。あそこを建てなおしできないようじゃ、梓に見合う男にはなれないから。」
「椋くん・・・。」
そんなのは違う。
納得が出来ない。
プライドが許さない。
「梓・・・愛してる。」
俺は、俺自身の手で、
この敗北を乗り越える!
部屋の中をいっぱい、充満している。
結局あそこでは何もできなかった。
手に握られたトンカチも何も壊さないまま用具入れに戻された。
PC近くのシュレッダー。
今回こそはこの企画書を処分しよう。
スイッチをいれると一定のリズムでなるモーター音。
紙をいれると不思議と心地の良い不協和音が流れた。
今の俺には最高にお似合いだ。
自嘲気味にほほ笑んだ。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
出ると中上梓(なかがみあずさ)がいた。
彼女は今俺が付き合っている女性だ。
もちろん父親は文治の常務取締役。
俺のキャリアアップの立役者だ。
これからもその為に役立ってもらうつもりだった。
しかし、本当の俺は・・・
コネをつかってでしか上に上り詰めることはできない凡庸な人間だ。
ピンポーン
もう一度インターホンがなる。
「どうしたの。」
「椋くんがお菓子部に入ったってお父さんから聞いて。」
「あぁ・・・。入って。」
ロックを解除する。
しばらくして、彼女が部屋に入ってきた。
「お邪魔しまーす。わぁ~椋くんの部屋久々~。」
「最近仕事が忙しかったから・・・。ごめんね?」
「もう、あんまりほっておくと・・・浮気しちゃうよ?」
彼女はすぐ冗談、と微笑んだ。
「私は椋くん一筋だもん。」
「俺も梓だけだ。」
俺はそんなことこれっぽっちも思っていないが、彼女はそういうとすごく喜ぶ。
そっと顔を近づけ短いキスをする。
「はい、コーヒー。」
「ん~おいし~。椋くんのコーヒー大好き。」
「梓がいつ来てもいいように、梓の好きな味にしてるんだ。」
一息つくと、彼女はさっきの話を始めた。
「椋くん、お菓子部に今いるって本当?」
彼女の目が嘘だと言ってくれ、と訴えている。
しかし、彼女には残念だがこれは事実だ。
「うん。」
「どうして!」
普段声を荒げない彼女が悔しそうに叫んだ。
彼女はヒステリックなめんどくさい性格じゃない。
そんなに俺があそこにいったのが気に食わなかったのか。
「椋くんはあんなとこにいちゃだめだよ。才能がつぶされちゃう。」
「俺には・・・才能なんてない。」
「ある!椋くんは人一倍努力してるもん。努力することも才能の一つなんだよ?・・・でも、努力は必ずしもむくわれない。あんな所にいたらでる芽もでないよ。」
本当に彼女は俺の将来を心配しているのだろう。
確かに、自分の彼氏があんな環境にいたら誰だって嫌だ。
「私、お父さんに部署変えてもらうように言おうか?」
「大丈夫だよ。」
今までの俺ならつかえる物はすべて使っただろう。
だけど、
「お義父さんにもいったけど、俺があそこに入ったのはお義父さんに梓との結婚を認めてもらうためなんだ。入る時はお義父さんの力を借りたけど、その後は自分の力だけでトップまでのぼりつめたいんだ。その為にはまず、あの部署から始めるのが最適だとおもったんだ。あそこを建てなおしできないようじゃ、梓に見合う男にはなれないから。」
「椋くん・・・。」
そんなのは違う。
納得が出来ない。
プライドが許さない。
「梓・・・愛してる。」
俺は、俺自身の手で、
この敗北を乗り越える!