化学で電子で不思議な彼女

大切にしたいのに、大好きなのに、なぜ俺は傷付けることしかできない?

始まりは些細なことなのに。

沢嶋は何も悪くねぇのに。

涙を必死にこらえていつものように笑ってみせた沢嶋の顔が頭から離れない。

なんでそんな顔するんだよ。

なんで無理に笑うんだ。どうして俺を罵らない?

高橋にやったように、どうして俺に本気で怒らないんだ。

あんなにひどいことを言ったのに。

今だって沢嶋を探して、ごめんって謝ることなんて簡単なのに。

許してもらえないかもしれない、なんて考えてしまうと下手に謝れない臆病な自分。

あんだけ傷付けといて、離れたくない、だなんて思ってしまう馬鹿な自分。

俺を一人から救い出してくれたのは、沢嶋なのに。

それに対して俺は、何をした―――?

「…っ…あー、イラつく。」

俺は吐き捨てるようにつぶやいた。

すると、俺の横を明るい茶髪が通り過ぎた。

…佐野…?

佐野は一瞬だけ俺と目を合わせて、勝ち誇ったような笑みを浮かべ屋上につながる階段の方に歩いて行った。

…はぁ?

何だアイツ。マジで腹立つ。

「ヤバ…部活。」

俺はとりあえず校庭に向かった。