「…言わない。」

「えー?何で?」

「佐野君には関係ないからだよ。」

笑顔で言ったのに、佐野君は少し悲しそうな顔をしました。

…何で?

「…そっか。」

「うん。」

別に、何も悪いこと言ってませんよね、私。

「…川村が羨ましいよ。」

「何で。」

「…沢嶋さんの彼氏になれて羨ましいよ。川村は。」

…何言ってるんだろうこの人。

よく分かんない。

「…あぁ、ごめんごめん、いいよ、気にしないで。」

「うん。」

元々気にする気なんて毛頭ありません。

「…じゃあ、ここからなんだけど…。」

ぎゅ、といきなり背中に手を回された。

え。

「…ラプンツェル…。」

耳元でそう囁かれる。

え、本当に何なんですかこの人。