「…やめて…。」

そこに響く、冷たい声。

ふっ、と高橋の方を見ると、沢嶋が、高橋の拳を片手で止めていた。

高橋は、何故か真っ青な顔をして沢嶋を見ている。

「さ、沢嶋!?」

その時の沢嶋の顔は、今まで見たことがない顔だった。

光の消えた目で、鋭く高橋を睨んでいる。

その時。

急に空気が重くなったように感じた。

女子のざわめきがぴたりと止まる。

瞬間、教室の窓という窓が全部開いて、暴風が流れ込んできた。

女子から再び悲鳴が上がる。

そして、先程まで綺麗に晴れていた空が一気に黒雲に包まれてゆく。

「…ねえ……川村は悪い事したの?」

沢嶋の、今まで聞いたことがない、低く、冷たい声。

沢嶋の周りには、どす黒いオーラが漂っているように見えた。

「…沢嶋…?」

俺が声をかけても無反応。

ただ強風が沢嶋の髪を揺らしていた。

「…ねえ…どうして…?」

すると、激しい雷鳴が辺りに轟いた。

思わず耳を塞ぐ。