「おーい、雅人ー」

げっ、この声は……お兄ちゃん。

「由梨、雅人以外の男と話してなかったよな? 雅人」

お兄ちゃんは、雅人君に聞く。

もう、いい加減にしてよ。

お兄ちゃんは、どうしてそんな心配症なのかな?

「話してないよ。俺と話してたからな」

雅人君が言った。

「雅人、ずりー。俺も由梨と話したかったのに。何の話してたんだ?」

お兄ちゃんが言った。

やっぱり聞くと思った。

雅人君、あの事は言わないよね?

言ったら嫌だ。

絶対お兄ちゃんが付いて来るから……

お願い、言わないで。雅人君。

私は、雅人君の方をじっと見た。

「今度の日曜日に由梨ちゃんとどこか行く事になったんだ。健斗も来るか?」

案の定……雅人君は、言って欲しくないことをお兄ちゃんに言った。

ああ、せっかく雅人君と2人っきりでデート出来ると思ったのに……

仕方ないよね……

「えっ、マジ? もちろん、俺も行く。雅人は、来なくていいよ。俺と由梨、2人で行くから」

お兄ちゃんは、予想通りな言葉を言った。

もう、最悪……

何でお兄ちゃんなんかと行かなきゃならないの?

「じゃあ、2人で行って来れば。邪魔しちゃ悪いし……」

雅人君は、遠慮して言った。

「ヤッター。由梨と2人だけのデート。雅人、悪りぃな」

お兄ちゃんは、そう言って雅人君の肩を叩いた。

「じゃあ、そろそろ戻ろうぜ。じゃあーね。由梨ちゃん」

「あっ、はい」

「由梨、帰りも一緒に帰るからな。先に帰るなよ」

お兄ちゃんが言った。

本当にお兄ちゃんって嫌だ。

何でそんな束縛ばっかりするの?

どうせならお姉ちゃんが居てくれたらよかった。

恋バナとかも出来るし……

私は、そう思いなら教室に戻った。