時間が止まったような、そんな感覚だ。 けれど溢れる涙は止まらなくて、時間の流れを感じさせる。 「俺は、美和が好きだよ」 冬馬兄ちゃんの声はやっぱり優しくて、私を抱き締めたまま続ける。 「幼なじみで終わらせる気はないよ」 ……嘘つき。 昔私をフッたくせに。 それに麻実ちゃんはどうなるの? 麻実ちゃんと付き合ってるんでしょ? そんな嘘、麻実ちゃんが可哀相だよ……。 その場凌ぎの嘘なんて、要らないよ……。 「帰るよ」 私を解放した冬馬兄ちゃんは立ち上がり、何も言わずに行ってしまった。