良明くんは振り返らず人混みの中へと消えていった。 私は良明くんのことをいつまでも見ていた。 見えなくなってもずっと視線はそのままに。 「……帰る?」 どこか申し訳なさそうに聞く冬馬兄ちゃんに、私は頷いた。 服から手を離し、今度は冬馬兄ちゃんの手を握る。 恐い。 これから先どうなるのか、恐かった。 「ごめん」 ……なんで謝るの? 冬馬兄ちゃんは何も関係ないのに……。 冬馬兄ちゃんの手は、なぜだかとても熱くなっていた。 .