クレヨンの『数学魔法』入門

 が、そんな事を言えるわけもなく、作り笑顔で何とか相手にわからないように耐える。

「じゃあこの部屋三軒どなりだから。それからこれをつけた方いいよ」
 そう言われて渡されたそれは、銀で出来た腕輪。
 その腕輪は、針や時間の文字の書いていない時計のような形でベルトがついており、紫音たちは手首につけた。

「これマジ忠告だけど、帰ってくるまで絶対、絶対にだよ、外さないでくれよ頼むからさ〜」
 はいはい…………、無くしませんから。
 紫音は始めて身につける、最近流行の山岡ハウスが作ったであろうその商品に満足。
 一方、美津子はそれを身につけても嬉しくないのか、それともこの男の作る物には興味ないのか、どこか冷めていた。

「………………クレヨン。早く行きましょうか?」
「あ、君やっと喋った」
「…………山岡………ハウスさん。許可証持ってますよね?」
「あ、忘れてた」