クレヨンの『数学魔法』入門

「私って何でこんなにダメなんだろう」
 そう愚痴をこぼす紫音は泣きたかったが、こんな性格のために出来ず、ぐっと涙をこらえ、目線は下の方に。

 廊下を歩くと、おしゃべりをしていたり、ジャレていたりしている生徒達。
 そして、年齢=今まで恋人がいない歴の紫音にとって、夢のまた夢である恋人同士の楽しそう甘甘な会話。
 学校なのに……………。
 そう思う反面、自分があの立場ならと何度も妄想していた。
 因みに紫音は小学生の頃ではあるが、一人だけ告白された経験があった。
 だが、その時某アイドルと結婚する事を夢見ていたので、あっさりと断った過去があり、それ以降はない。

「……………か、か、か、か、帰えっちゃ、帰っちゃおうかな〜〜」
 独り言にしては大きな声でそう言ってはみたが、誰も紫音の事など気にも止めず、それを無視するかのようにほかからの笑い声に掻き消された。