「どんだけ昔の話だよ」

タケルが苦笑する。

黒いスエットを着て淡々としているタケルが、このリビングで一番カッコいい。

―――こんなに好きなのに……。

また溜め息をついている。

私は憂鬱な気分で悠斗の方を盗み見た。

彼は私が居ない分だけ距離を置いて、じっとタケルを観察している。

野心家の顔。

彼はタケルに勝ちたいんだと思った。

最初から薄々気づいてはいた。

私はただの当て牛……じゃなくて当て馬だってこと。