右往左往する理沙を想像して高笑いそうになった時、背後から大島が
「じゃ、関谷君。七時頃、ロビーで待ってるから」
と耳打ちしてきた。

あたしは慌てて邪悪な笑みを引っ込めた。

「はぁい」

可愛い声で返事をしたものの、それまでに赤木パーサーのお小言がおわるかどうかは定かではない。 

ちょっとブルーになっていると、今度は可奈子が
「せんぷぁい。覚えてくれてますよね? ヤ・ク・ソ・ク」
と、鼻にかかった声で擦り寄ってくる。

「わかってるってば。連れてったげるから、可愛いカッコしてきなさい」

「はーいっ」

おどけて敬礼した可奈子がスキップしていく。

―――ま、いっか。

大島はあたしにとって、ただのスポンサーだ。

いつもステイ先で気前よくおごってくれる。

が、ウチのパイロットの年収は三千万。

投資会社のヤングエグゼクティブであるヒロトには、収入も将来性も及ばない。

―――けど、大島機長には散々おごってもらったし、ここは一つ、専務の娘を紹介して借りを返しておくか。 

可奈子に恩を売っておくのも悪くないかも。