初めて聞くような、いい返事をした可奈子は、私と反対の通路に回って、乗客に声をかけ始めた。

―――やりゃ出来るじゃん。

その後も小さな揺れが続き、気分が悪くなる乗客が続出。

可奈子が付き添っていた一人旅の小学生がいきなり嘔吐した。

―――なんで隣りに座ってんのに、床に吐かせちゃうわけ?

心の中で可奈子を罵りながら、雑巾と消臭スプレーを持って走った。

吐いた子供は号泣。

けど、そんなのかまってはいられない。

「早く拭いて!」

あたしは可奈子に雑巾を投げつけた。

「は、はい」

可奈子が恐る恐る吐瀉物の側にしゃがんだ。