臨月を迎えた私はタケルと一緒に新居へ移った。

六畳の部屋から大きな一戸建てに家具や荷物を移動させてみると、本当にガランとして更に広さが強調されるようだった。

一人でいる時は、たまらなく寂しい。

私は赤ちゃんが生まれ、家の中が賑やかになる日を待ちわびた。

それでもまだ広すぎるだろうけど……。


「理沙ちゃん。そろそろ、産休に入ったら?」

シェフの和田さんが気遣ってくれる。

けど、あの部屋で、深夜まで帰って来ないタケルを待つのは気がすすまない。

忙しい厨房で立ち働いている方が全然マシ。

「ありがとうございます。けど、まだ大丈夫です」


強がっている時、美穂が厨房に飛び込んできた。