「美穂さん」

静かな声で尚道が呼んだ。

「父親は僕でもいいんですか?」

「え?」

「僕と結婚してください」

あたしは脱力した。

「尚道ぃ。あんた、あたしの話ちゃんと聞いてた? 誰の子供かわかんないって言ってんのよ?」

「かまいません。あなたの子供には間違いないから」

「け、けど……」

「あなたの生む子供は全部、僕の子供です」

―――なに、言ってんの? この人……。

意味がわからないのに、何かが喉の奥に熱く込み上げてくる。