酒乱の機長を先頭に、クルー全員で列をなして空港ロビーを横切る。

会社の玄関ホールで編隊が解かれた後、あたしは逃げるようにロッカールームへ駆け込んだ。

ヒロトから婚約指輪を受け取った以上、何か重大な理由でもない限り破棄することは難しい……。

―――結婚できない深刻な理由を捏造するか……。

―――もしくは、あたしがヒロトに徹底的に嫌われるか……。

後者の方があたしに向いてる。

けど、キャビンアテンダントの仕事を続ける以上、藤山との関係が険悪になるのは好ましくない。

―――この際、高飛びしちゃおうかな……。

後ろ向きな思考が頭の中を駆け巡った。