戦わずして負け犬になった可奈子の気持ちなんて知ったこっちゃない。

けど。

―――大島のヤツ。あたしを押し倒しておきながら、赤木といいムードだなんて許せない。

酔って記憶を失った大島に、あのままヤラレてたら、と思ったらゾッとする。

二度と酒を飲みたくなくなるようなお仕置きを考えながら、大島を睨んでいる時、背後から
「関谷さん」
と、聞き覚えのある声に呼ばれた。

反射的に笑顔を作り、『はい』と振り返っていた。

伝説のチーフパーサー、藤山が立っている。

―――げっ……。

あたしの頭の中に、ヒロトの『ママぁ』という甘え声が響いていた。