「俺はいますよ。仕事じゃなく、一番好きな人は別に」

そう言って、悠斗が私に分厚いアドレス帳を手渡してきた。

私は涙をぬぐって、そのページを開いた。

あ行から英文字のページまで、ギッシリと女性の名前と電話番号。

―――す、すごい数……。

「それ、誰にも見せたことない俺の仕事道具。一番最後のページ、見てもらえます?」

背表紙の内側に一枚のプリクラが貼ってある。

―――え? わ、私?

悠斗の隣りでブイサインしている女の子は、大学受験失敗のストレスで太り始めた頃の私にそっくりだった。