「ち、違う、違う。ジッパー、上げてもらってただけだって」

言い訳が空回りしている。

「ちょっと、萩野。あんたも何とか言いなさいよ。なに部外者みたいな顔してんのよ」

萩野は慌てたそぶりも見せず、ソファーに座って雑誌を開く。

―――こ、こいつ……。 

拳を握りしめた時、理沙の目からポロッと涙がこぼれた。

そのままクルッと背中を向け、そこから立ち去ってしまった。

「り、理沙ちゃん!」

なぜか尚道が追いかける。

―――あーあ。大惨事じゃん……。