朝日に照らされた香港の町は、夜の輝きを失い、どこか白けて見えた。

まるで、今のあたしの心みたいに……。

バロック音楽の流れるスイートルーム。

給仕付きの豪華な朝食を銀のフォークでつついていると言うのに、何だか楽しくない。

気持ちがどんどん冷めていく。

上目遣いに盗み見たヒロトは、美しい姿勢で上品にフォークとナイフを操っている。

完璧なテーブルマナー。

ボーイとやりとりするときの、流暢なキングスイングリッシュ。

いつもならウットリするはずなのに、今朝聞いてしまった
『ママぁ』
という鼻にかかった声ばかり思い出してる。