ノゾミさんは私にベッドを譲り、自分は床に布団を敷いて横になった。

「先生。萩野さんと喧嘩したって言ってましたけど、何があったんですか?」

本当は他の男とデートさせようとするタケルの気持ちがわからないことを相談したかった。

けど、複雑な状況でシュン君と一緒にいるノゾミさんを見たら、これ以上、精神的な負担をかける気にはなれなかった。

「ううん。もういいの。ノゾミさんの顔みたら、落ち着いた」

「ほんとに?」

「うん」

私はベッドから手を下ろして、掛け布団の上にあったノゾミさんの手を握った。

「こうやってノゾミさんの側にいるだけで、心に充電できちゃうから」

ノゾミさんが優しく手を握り返してくれる。


私は真っ暗な天井を見つめて聞いた。

「ノゾミさん。ホントはシュン君のこと、好きなんでしょ?」

そう聞くと、ノゾミさんの手がピクリと反応した。