翌朝。

ヒロトがなかなか起きないので、勝手に朝食のルームサービスを頼んだ。

フルーツとコンチネンタルブレックファースト。

部屋のベルが鳴った。

―――しまった。チップがない。

あたしはベッドでまどろんでいるヒロトの肩を揺すった。

「ねぇ。ヒロト、起きて」

ヒロトは眠そうに寝返りをうち、むにゃむにゃした声で
「ママ……。目玉焼きは半熟じゃなきゃ食べられないよぉ……」
と、寝言を言った。

「マ、ママ?」

あたしの前では藤山のことを『母さん』と呼ぶヒロトが、めちゃくちゃ甘えた声で『ママ』と呼んだ。

―――ううわ……。

ドンビキだった。