思わず、自分の視線を薬指に落としていた。

たとえ形式だけでも、私を縛ろうとするものはない。

「あれ? 理沙さん。マリッジリング、してないんですか?」

「う、うん……」

自分から結婚指輪が欲しいなんて言えなかった。

「ほらね? タケルさんもわかってるんだ。あんなもので心まで束縛することは出来ないって」

タケルが私にリングをくれなかったことに、そんなに深い意味があるんだろうか。

単に、買いに行くのが面倒くさかっただけのような気がする……。