「・・・ちょっと、さ」
と、突然声を掛けられ、肩を揺らす。思い切りぎゅっと目を瞑る。
そして数秒の間の後、
「手、離して?」
「・・・・・・え?」
「ずっと、掴んでて、取れない・・・」
「は!!」
気づかぬ内に手に力を入れていたみたいで、彼が困っていたことなど知りもしなかった。
慌てて手を引っ込めると、「・・よろしく」と生気の無い声が返ってきて、目の前で扉が閉まった。
それに少し腹を立てながらも、安堵していたのも事実。
というか。
(目の前で扉、閉めなくてもいいじゃない・・)
なんて悪態をついてしまう。
