診察が終わり、私と博人は会計に向かう。

・・・何も会話しないまま、重い沈黙。

・・・秀の子供が宿っていたなんて、

こんなに喜ばしい事はない。

でも、今は手放しに喜んでいる場合じゃない。

私は、人質なのだから・・・

どうやって、お腹の子供守ろうか。

博人は、お腹の赤ちゃんを殺すかもしれない。

いや、殺してしまうだろう。

自分の子供なら、喜べるだろうが、他人の子供だ。

しかも、憎む相手の子供・・・

私は無意識に、博人から離れていこうとした。


…が、私を引き寄せ、ピタリと寄り添い座りなおした。


「…おめでとう、琴美さん」

「・・・」


「そんな顔しないでください。

・・・そのお腹の子供は、琴美さんの子供です。

だから今から、紹介状を書いてくれた病院に行きましょう」


「…産んでもいいの?」

目を見開き問いかける。

博人は満面の笑みを見せ頷いた。


「当たり前じゃないですか?

僕も鬼じゃない・・・元気な子供産んでください」

…何か企んでいるのだろうか?

私を安心させといて、後で事故に見せかけて殺すとか?

嬉しいけど、素直に喜べない。