・・・そして、明朝。

仕事を休んだ博人は、私を連れて、

街外れの小さな病院にやってきた。

・・・そこは、患者さんはまばらで、

お年寄りが多い・・・若い患者は、私くらいだった。


「香田さん、香田琴美さん、中へどうぞ」

看護師さんに呼ばれ、博人は私の腕を引っ張った。


「香田琴美、それが君の名前」

小さな声で呟いた博人は、ニコッと笑った。

…どうやら、どこからか、偽造の保険証を入手したらしい。

私の今の名前は、『香田琴美』


私は博人に腕を掴まれたまま、診察室に入る。

色んな検査をして、また待合室で待つ。

…それから約30分後。

簡単な検査結果が出て、また診察室へ。


私を見つめる先生の顔は穏やかな笑顔で、

とんでもない事を言い放った。


「おめでとうございます、香田さん。

妊娠されているようです・・・

詳しい事は、ここでは検査出来ないので、この近くの

産婦人科を受診してください、紹介状を書きますから。

貴方もお父さんですね、しっかり支えてあげてください」


先生の言葉に頷いた博人だったが、

内心喜んでなどいない・・・

だってお腹の中の子は、紛れもなく秀の子供なのだから。