私の目の前に現れたのは、

数時間前、

私とは縁が無くなってしまったと思ってた、

恋しい人。

・・・その人の顔を見ただけで、

涙が溢れ出す。

体中の細胞が、貴方を愛してると、

叫んでる。

混乱した体は、その場から一歩も動けそうにない。


「遅かったな、秀。

私は少し出るから、

少しの間だけ、琴美と二人で話すといい。

どんな邪魔も入らないように、他の者には

伝えておくから」


そう言った父は、

秀の肩をポンと叩き、

署長室を出ていった。


静かにドアが閉まり、

その途端に、私は秀に抱きしめられた。


「琴美には何も言えなくて・・・

オレの勝手な判断で、離婚届を出した」


「…でも、私たちは夫婦のまま、

何でしょう?」